アメリカに移住して8年目のころ。HSAの存在は知っていたけどきちんとどういうものか調べていませんでした。こんなに強力な口座だったとは。
それがHSA(Health Savings Account)です。
HSAとは何か — 一言で言うと「医療費専用の特別な財布」
HSAとは、Health Savings Account(健康貯蓄口座)の略で、アメリカの税制が認めた医療費積立専用の口座のこと。
ただし、「医療費専用」と思っていると大きく損をします。使い方次第で、アメリカ最強の投資口座にもなります。
日本にはない概念なので、一番近いイメージで言うと「401(k)の節税メリット」と「医療費専用口座の自由な引き出し」を合体させたもの、という感じでしょうか。
使うための条件 — HDHPとは何か
HSAを使えるのは、HDHP(High Deductible Health Plan)という保険に加入している人だけです。
保険料が安い代わりに、年間の自己負担額(deductible)が高めに設定されている。2026年の基準では、個人の場合はdeductibleが$1,700以上、家族の場合は$3,400以上の保険がHDHPに該当する。
逆に言うと、一般的なPPO(Preferred Provider Organization)やHMO (Health Maintenance Organization)保険に加入している人はHSAを使えません。まず自分の保険がHDHPかどうかを確認してください。
HSAが向いている人・向いていない人
「HSA = 健康な人専用」というイメージを持たれやすいですが、それは半分合っているようで半分違うようです。
めちゃくちゃ向いている人
- 健康で医療費が少ない人
普段ほとんど病院に行かず、年1〜2回の健診程度という人には最適です。HDHPの高い自己負担額(deductible)に達することなく、HSAの節税メリットだけを丸ごと享受できます。拠出した分をそのまま投資に回せるので、複利効果が最大限に働きます。
- 投資・老後資金に積極的な人
401(k)やRoth IRAをすでに活用していて、さらに非課税の投資枠を増やしたいと考えている人にも強く向いています。HSAはトリプル非課税で既存の口座より有利な部分が多く、老後の医療費はどうせかかるのだから、先に非課税で積み上げておけます。
- 収入が高く税率が高い人
税率が高いほど、拠出時の節税効果が大きくなります。また若いほど複利の恩恵を長い年月受けられるため、30〜40代で収入が高い人は特に恩恵が大きいです。
- 自営業・フリーランスの人
会社が保険を選んでくれる会社員と違い、自分で保険を設計できる立場にあります。HDHP + HSAの組み合わせを自由に選べるので、節税効果と保険料の安さをセットで享受できます。
要検討の人
- 持病・慢性疾患がある人
定期的な通院や処方薬が必要な場合、HDHPの高い自己負担額が負担になる可能性があります。ただし一概にNGとは言えません。年間の医療費が多くてHDHPのOut-of-pocket maximum(自己負担上限額)に早く達するケースでは、そこから先の医療費は全額保険がカバーするため、HSAの節税だけを丸ごともらえる構図になる場合もあります。必ず数字を比較してから判断しましょう。
- 子どもが多いファミリー
子どもの通院・予防接種・急な発熱での受診が頻繁にあるご家庭は、Family HDHPの高い自己負担上限にも注意が必要です。年間の予想医療費を計算して、PPOとの総コスト比較をした上で判断することを強くおすすめします。
「持病があってもHSAが有利」なケースもある
持病があっても、次のような条件が重なるとHSAの方が有利になることがあります。
- 毎年Out-of-pocket maximumに達するほど医療費が多い場合
- 会社がHSAに大きなマッチング拠出をしてくれる場合
- 老後の医療費に備えて長期で積み立てる発想がある場合
一点だけ補足しておくと、持病がある人が一番やりがちな間違いは「HSA = 健康な人だけのもの」と思って最初から除外してしまうことです。実際は、医療費が多くてもOut-of-pocket maximumに早く達するタイプなら、そこから先は全額カバーされるので「HDHPのリスク」がなくなり、HSAの節税だけ享受できるというケースも少なくありません。
「自分には関係ない」と決めつける前に、一度open enrollmentの時期に数字を計算してみることをおすすめします。
まず確認すること
今加入している保険の書類を開いて「HDHP」または「High Deductible」という文字を探してほしい。それがあれば、今すぐHSAを始められる。わからなければ会社のHR担当に聞くのが一番早い。

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